スポーツ走行(8月6日)
作成日:99/08/18
更新日:99/08/19

8月5日、木曜日、夜11時。北ゲート前。明日から日曜日までの3日間、ここもてぎで過ごす事になる。

北ゲート前に到着すると、トランポで寝るセッティングをしているおーたとアキラを発見した。どうやら彼らも今しがた到着したばかりのようだ。
いつものパターン通り、俺も自分の車に宴会のセッティングをする。
朗報!〜アキラの怪我その後〜
 一時は、白骨化した骨が再び蘇生する可能性はゼロに等しいと医師から通告されたアキラ。
 残された方法は白骨化を止める為の再手術を行う事。しかしその手術は手首が動かなくなると言う代償を伴うものだった。
 手術して動かなくなると言う、ある意味不条理な理屈に納得出来なかったアキラ。それでも奇跡を信じ、諦める事をしなかったアキラ。
 その結果、白骨化した彼の骨は、なんと再び蘇生をし始め、現時点で再手術の必要は無くなっていた。

 医師:「ダメなはずだったんだけどなぁ〜。やっぱ一般の人とは違うんだね。」

 一般の人間と違う、スポーツマンと言う肉体と精神に、担当の医師も腰を抜かしていたそうだ。
 今後は抜釘術(ばっていじゅつ:骨を固定しているピンを抜く手術)を施し、リハビリにより手首の運動を行う事になる。

 近い将来、アキラは必ずコースへ復帰します。
深夜1時をまわった頃、明日に備え、おーたは自分の車に引き上げる。

アキラ:「俺は明日走る訳じゃねーからいーけど、内澤さん平気なの?」

俺:「あぁ。別に大丈夫だよ。」

今まで、俺よりも辛い状況に置かれたアキラに相談する事が出来なかった俺は、怪我の良好を知り、悩みの全てを一気にぶちまけた。

去年、400で出したタイムすら上回れない事、予選へのプレッシャー・・・。

アキラ:「ちゃんと決勝行かなきゃダメだよ。シャレんなんないんだから。」

俺:「そうなんだけどな・・・。」

アキラ:「大丈夫だって。絶対通るから。」

ついこの間まで自分を信じろと説教していたのに、今は立場が逆転している。
そうだ。こいつはしっかり奇跡を起こした。俺もがんばんなきゃ。予選なんかどーって事無い。不思議とこの時はそう思えるようになっていた。

アキラ:「しかし、難しいもんなんだね。ビックバイクってのも。」

俺:「な。この単純にいかない所が又おもしれーんだろーけど。」

パワーがあれば、速いエンジンに載せかえれば、誰が乗ってもその分タイムが上がると思っている人達は意外に多い。
右へ左へ曲がりくねったコースを1周し、そのタイムで競うロードレースはそんなに単純なスポーツじゃない。
パワーだけがあっても、車体やサス、タイヤとのマッチング等、2輪としてのバランスが取れていて始めて速く走る事が出来る。元より、そのパワーや運動性能を扱えなければいいタイムなど出る訳が無い。
SPからGPへ乗り換えても、SPのタイムを上回るのに時間がかかるライダーが多いのも、その理由だ。同じ名前のバイクでも、最新型に乗ってタイムを落とすライダーだって居る。

そう言った意味でも、今の俺達はちゃんとVTRに乗れていない。

アキラとの話は朝の4時まで続いた。去年、どんなに盛り上がっても2時には寝ようと決めた俺達だが、学ばない人達である。
アキラがサーキットへ来るのも久しぶりだし、今日だけは話をしたかった。



8月6日、金曜日、朝7時。全開寝不足で、ついでに2日酔い。

俺:「また4時までやっちゃってるよ・・・あぁ気持ちわりぃ〜。起きたくねぇ〜。」

だるい体を動かし、東ピットへ。
今日の走行は東コース。明後日の日曜日はもてぎ選手権第4戦が東コースで開催される。つまり、明日の走行は特別スポーツ走行となるが、俺らのようにエントリーしていないライダーでも走る事が出来る。ちなみに今日は一般のスポーツ走行日だ。

東ピットへ到着すると、Kureとじゅんが既にピットを取っていた。KureはNSR150、じゅんはSTでそれぞれエントリーしている。
暫くしてトシも到着する。

今日の走行予定は、3人ともそれぞれ午前1本、午後1本の合計2本を走る。

今日1本目の走行はトシからだ。ちなみにトシは、東コースが殆ど始めて。

トシ:「目標タイムは?」

俺:「ん〜。そうねぇ。フルで17秒出てるし、サンパチ(38秒)くらいかな?いや、まぁ40秒切れればえーんじゃないの。」

俺:「ショートカットは前ちょっと走った事あるから知ってるっしょ?あそこ全部セカンドだから。あと、5コーナーのブレーキングポイントだけちょっと気にした方がいいかも。フルん時より4コーナーの脱出スピード高いから。」

バイクの方は、リアの残ストロークが1センチを切り始めた為、イニシャルを1段入れる事にする。VTRのイニシャルは1段変えると結構変わってくる。
ブレーキパッドも新品に交換する。当然、今回もFCMだ。予選まではこのパッドで行く。
効きは素晴らしいFCMだが、何しろ耐久性が無い。前回交換してからの走行時間を計算すると、約2.5時間と言った所だ。タイムが上がってくれば更に交換サイクルは短くなるだろう。決勝はタイヤと同じ1回交換でいく為、4時間はもつノーマルを使う事にする。
パイロットレースは前回の最終走行でリアが滑り始めたが、見た目的にはスリップサインまで少し余裕がある。一旦時間を置いて冷ませばもう少し使えるだろうと思い、とりあえずそのままでいく。

10時50分、プロダクション1本目の走行が開始された。トシ、コースイン。

1周目、1分45秒。2周目、42秒。3周目にピットインしてくるトシ。

俺:「ん?どした?」

トシ:「ダンパーは?」

俺:「最強だよ。」

トシ:「なんかコーナーでハンドル振られるんだけど。」

俺:「あぁ。ショートカットとかね。しょうがねんだ。そーゆーバイクだと思って。大丈夫だから。」

腑に落ちない顔で再びコースイン。1周目、39秒でホームストレートを通過するトシ。

俺:「なんだ。簡単に40秒切れるんじゃん。」

2周目は40秒まで戻し、3周目に38秒後半。

俺:「おぉ。やるねぇ。」

そして又ピットイン。バイクに駆け寄る。

俺:「何?」

トシ:「なんかタイヤ滑るんだけど。」

俺:「はっはっは。やっぱダメだったか。まだ時間あるから適当に流してきなよ。」

なかなか減らないタイヤだとは思っていたが、どうやらVTRの場合、スリップサインまでは使えないらしい。前回交換してからの使用時間は約5時間。ここまで使えれば上等だろう。
残りの時間で4周。その間タイムは39秒〜41秒。1本目の走行が終了した。
1本目の走行が終わった頃、空には何やらアヤシイ雲が流れてくる。またいつものもてぎウェザーとならなければ良いが・・・。

続けて次の走行。レーサークラス。新品タイヤに履き替え、おーたの番。

俺:「38秒切らないと第3ライダーと第1ライダー交代すっからねぇ。」

今年はおーたが第1ライダー、俺が第2ライダー、トシが第3ライダーである。

おーた:「お、おう。」

俺:「んじゃ、タイヤの皮むき、よろしく。」

俺はサインエリアをトシとアキラに任せ、ヘアピンで見学する。

1周目、42秒。2周目、40秒。そして3周目にピットイン。慌ててバイクに駆け寄る。

おーた:「イニシャル半目盛り抜いて。ダンパーは最強でいい。」

俺:「おっけ。」

フォークのイニシャルを半目盛り抜き、ダンパーを最強にする。トシの言ってたハンドルの振れはやはりひどかったらしく、S字2つめでも相当振られるらしい。

再びコースイン。1回ホームストレートを通過するが、又ピットイン。
先程と同様、ヘアピンで見学していた俺は今度もピットへと走る。忙しい。

アナウンス:「え〜。現在、90°コーナーから5コーナーにかけて雨が降っております・・・。」

俺:「え?あ、そゆ事。」

スリックを履いた125のライダーも続々とピットインしてくる。ダウンヒルストレートエンドから5コーナーの区間で局地的に雨が降っているらしい。

おーた:「あそこだけ雨降ってんだよ。あぶねーから戻ってきた。」

俺:「90°ってすぐそこじゃんか。」

おーた:「そう。(笑)」

俺:「へぇ。サーキットって広いんだね。(笑)」

暫し様子を見て再度コースイン。残り時間も少なく、2周で走行終了となった。タイムは2周とも36秒代。フロントのセッティングを変えたのが決まったようだ。



おーたの走行が終わった直後、雲行きのアヤシイ空を眺めつつも、12時30分からの走行券を買いに行く。
そしてピットへ戻った瞬間、どしゃ降りの雨が落ちてくる。

俺:「あ、あのよ・・・。」

雨は1時間程降り続け、ウエットどころかパドックは川状態。

俺:「し、終了〜。(泣)」なんかもうヤケクソな気分。


走行開始時間になっても誰一人コースインするライダーは居ない。当然、俺が走る訳無い。

暫くすると、先ほどの豪雨が嘘のように、晴れ間が見え始める。風もあり、路面は一気に乾いてくる。


午後1本目、2時30分からの走行はハーフウェット。当初の予定通り、トシ出動。

1周目、2分代で周ってきたトシは、最終的に1分45秒をベストに13周し、走行を終える。

次、俺の番。トシに状況を聞くと、セカンドアンダー以外はほぼドライ。雨はもう降りそうにない。やっと今日1本走れる。

3時20分、プロダクション走行開始。

1周は様子を見て走るが、確かに日の当たらないセカンドアンダー以外はほとんど乾いている。ショートカットの進入だけ気を付ければ、あとは全力で走れる。

1周目、40秒から約0.5秒ずつタイムを縮め、8周目に35秒代へ入れる。今日の目標タイムは34秒代。
その後、頑張っても頑張っても35秒が切れない。タイムは35秒前半から36秒後半で暫く周回を重ねる。

もう何周走っただろうか?そろそろ走行終了を感じさせる。ヘアピンを立ち上がり、ホームストレート。アキラの出すサインボードはやはり35秒69。コントロールラインで係員がチェッカーの準備をしている姿が目に入った。

俺:(これがラストだな・・・。)

最後の力を振り絞り、全力でタイムアタック。今日はもうこの1周で終わりだ。
ホームストレートへ帰ってくると、チェッカーが振り下ろされた。35分の走行時間を目一杯使って全20周。東コースをこんなに走ったのは始めてだ。

ピットへ戻り、最終ラップのタイムを見る。35秒07。おしい。もう少しで切れたのに。


俺:「まっ、いっか。明日もあるし、今日はこのくらいで勘弁してやろう。」

そして本日最後の走行、4時10分。おーたの番。

コースインしたおーたは、そのまま1周し、ピットへ戻ってくる。

おーた:「なんかタコがめちゃくちゃな振れ方する。」

俺:「えっ!?マジ?」

解説〜タコ〜
 タコメータの事。エンジン回転を表す計器。
おーた:「とりあえず、もう一回行ってくるわ。」

再度コースインするおーた。しかしホームストレートを通過する事なく、又ピットイン。

おーた:「なんかエンジンも調子悪い。上まで奇麗に回っていかない。」

とりあえず、スタンドをかけ、プラグキャップを締め直す。


そして又コースへ出て行く。今度はピットに戻らず、ホームストレートを通過する。計測開始。
1周し、1分40秒で再びストレートを通過。

俺:「直ったのかな?大丈夫そうだね。」

と、思ったのも束の間、次の周にはピットイン。
今度はプラグ自体を締め直し、再度コースイン。


しかし改善されず、ピットへ帰ってくるおーた。時間も残り少ない為、今日の走行を諦める。



今年初めてのトラブルらしいトラブル。現象は、8,000回転付近でエンジンがばらつき始め、そこから奇麗に拭けあがっていかないと言う。暖気では問題無く上まで回る。ちなみにVTRのレッドゾーンは9,500回転。シフトポイントもその辺り。

どのギアでも同じ症状になるとの事なので、原因を追求する前にパドックで再現テストをしてみる事にする。1速ギアで8,000回転以上回して同じ症状が出る事を確認出来れば、コースでの走行時間をトラブルシュートに使わなくて済むからだ。

頭にタオル。Tシャツ、短パン、サンダルと言う格好でVTRに跨り、エンジンをかける。そのまま東パドックの先にある駐車場へ向かう。

俺:「この辺なら平気かな・・・。」

トランポも駐車していない駐車場の一番奥を使い、1速で引っ張ってみる。直線で300メートルはある。



俺:「こえーー!」

一気に100キロを超える。恐い。たまらずアクセルを戻し、フルブレーキ。

ドヒュドヒュドヒュドヒュ・・・

俺:「こうして乗ってみるとすっげーバイクだなぁ。」

装具を一切身に付けず、町乗り感覚で走ると、改めて最近のバイクの進歩を感じる。

何度かこれを繰り返す。やはり2回に一回位の割合で8,000回転付近でのバラツキを感じる。駐車場での実走テスト終了。パドックに戻る。

症状から、プラグ周りを疑ってみる。

原因究明

おーた:「あっ。わかった!」

俺:「わかった?何々?」

プラグと、プラグキャップの間に挟まれる格好で付いている接続端子が緩んでいた。とりあえずプラグを交換し、緩んでいた接続端子をプラグにガッチリと固定する。そして又駐車場へ。


先程と同じように9,500回転まで回してみる。今度は何度やってもばらつく感じは出ない。ピットへ戻る。

おーた:「どうだった?」

俺:「おっけー。直った。」

大事にならなくて良かった。ホッと一安心。



パドックは夕暮れを迎える。1本しか走れず、35秒も切れなかったが、フラットまでは出たのでヨシとする。どうせ明日も走れる。明日こそ34秒代に入れよう。

たくましい右腕 やせ細った左腕


いつもの風呂へ行き、今日1日の汗を流す。飯を食った後、駐車場で宴会。


そしてここでも突然の豪雨・・・。各自トランポのリアハッチを開け、雨が止むのを待つ。

12時を過ぎた頃、週末の選手権にエントリーしているST団が次々にやってくる。すぅ、てんちょ、みの、もり。明日の練習走行に来たdevil。大阪から駆けつけ、水戸インターを通り過ぎたえ〜ぼも遅れて登場。明日の朝はえいじも来る。久しぶりの大人数にはしゃぎたくなるが、前夜寝てない俺とアキラは眠さに耐えられず、1時過ぎにはダウン。

明日は久しぶりにみんなと走れる。この為にわざわざプロダクションを予約しておいた。(爆)楽しい1日を予感させる。

後で聞いたら、みんな4時頃までやっていたそうだ・・・。


セッティングデータ
ノーマル今日のセッティング
サスペンション
(フロント)
突き出し0o7o
油面130mm130mm
イニシャル4目盛り3目盛り→3+1/2目盛り
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し→最強
サスペンション
(リア)
車高0o5o上げ
イニシャル最弱から2段目最弱から3段目
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
メインジェットF165、R162(国内仕様)F175/R178

今日のベストタイム
HIRO1分35秒07
おーた1分36秒43
トシ1分38秒87

トラブルや雨にも祟られたが、サスセッティングの進んだ1日だった。明日の走行でセッティングの最終調整を行う。


〜 昨日の教訓 〜

・2時には寝よう!>Compus

〜 今日の教訓 〜

・2時には寝よう!>起きてた人

以上

[スポーツ走行(8月7日)]に進む

[’99もてぎ7時間耐久参戦計画]に戻る

[Compus Road Racing]