第2回公開練習(8月2日)
作成日:99/08/16
更新日:99/08/17

第2回公開練習当日。朝から絶好調でいい天気。1回目の公開練習は雨で全然走れなかった(ってゆーか、走らなかった)が、今日は雨の降る心配をしなくて良さそうだ。
もはや相手にされなくなった山犬神に別れを告げ、レンガを後にする。

クゥゥゥゥ〜 ぷいっ

朝7時過ぎにパドックへ到着。30分程遅れてKLEVERも到着。今日はSDRのシェイクダウンだ。

いつも仲睦まじいKLEVERの3人。 ピットで暖気。SDRはさすがに目立っていた。

朝一番の静かなピットロードにSDRのエンジン音が鳴り響く。大排気量の4サイクルが多い中、TZの足回りが移植されたSDRの車体は注目を浴びる。
俺達も負けじとVTRをピットロードに出すが、こんな珍しくも無いバイクを見てくれたのは隣に居た見知らぬオッサンだけだった。


受付でトランスポンダーと走行券を受け取り、バイクに付ける。

暫く時間が空き、ブリーフィングに行ったKureが帰ってくる。

Kure:「なんかね、今年はVTRだけで予選やるんだって。」

俺:「げっ!マジですか!」

がっくりとうなだれる俺。

Kure:「なんちゃって。そんな訳ねーじゃん。」

俺:「はっはっは。本気にする俺も訳わかんねーな。」

公開練習で既にナーバスになっている俺。とりあえずKureにはキックを入れておく。

エントリーは177台。そのうち今日参加してるのは110台余り。
3グループに分けられ、各グループとも午前50分、午後50分の合計100分走行出来る。参加台数が多い為、去年より1グループ増え、走行時間も少なくなった。
俺達はAグループで、KLEVERはCグループ。

グループ午前走行午後走行
10:30〜11:2014:30〜15:20
11:35〜12:2515:35〜16:25
12:40〜13:3016:40〜17:30

1本50分を3人で均等に走るには、ピットイン,ピットアウトも含めてアベレージ2分15〜18秒と考えると、1人当たり5周で最後に少し余裕が出るくらい。つまり、今日は1人1本5周を2回走るだけ。
何かあった時の事を考え、おーたが最後とし、トシを最初にする。俺は2番目を走る。トシにとってはVTR初ライドとなる。やはり、ビックバイク自体が始めてだ。

エンジンのセッティングについて相談にのるおーた

つなぎに着替え、走行の準備をするトシ

ライダー交代時の取り決めを交わす。初めて乗るのが公開練習とあって、緊張気味のトシ。


Aグループ1本目。出走前の様子。

ピットロードに様々なバイクの排気音が鳴り響く。

トシ:「目標何秒かな?」

俺:「ん〜。初めてだし、まぁFZRのタイムは出ねーだろーな。20秒切れば上々なんじゃねーかな。」

トシのFZRのベストタイムは18秒。

トシ:「19秒かぁ。」

俺:「ま、とりあえずタイムとか気にしないで走ってくれば?」

トシ:「あぁ。初めてだし、感覚掴む感じで走ってくるわ。」

俺:「FZRで18秒出てんだし、20秒は切れるっしょ。でもタイムとか気にしなくていいから。」

トシ:「あ、あぁ。」

俺:「ブレーキングポイントだけ押さえれば20秒切れるから。でもタイムとか気にしないで気楽に走ってくれば?」

トシ:「わかったっちゅーに!」

10時30分。Aグループ1本目の走行が開始された。

VTRデビュー!

1周目、29秒で周ってきたトシは、2周目にいきなり21秒。

俺:「なんだ。19秒なんて楽勝じゃんか。」

と、思われた3周目、何故か24秒。4周目は更にタイムを落とし、25秒。
5周で交代の為、早くもラストラップ。サインボードにピットインサインを表示する。

ホームストレートを通過するトシ。タイムは2分19秒82。

俺:「おぉ。20秒切ったな。さって、俺の番だ。気合入れて行くぜ!」

予選を通過する為には、とりあえず練習で10秒を切っておかなければならない。この走行で絶対に9秒台を出す。
大丈夫。昨日の勢いで行けば必ず10秒切れるはずだ。

トシがピットインしてくる。

速効で交代。ピットアウト。タイヤは暖まってる。1周目から全開。

俺:(9秒だ。9秒・・・。)

全開で1周し、ホームストレート。計測開始。

俺:(いい調子だ。昨日と同じ感じで乗れている。)

次から次へとやってくるバイクを交わす。ストレートでも気が抜けない。
ホームストレートでも他のバイクと競りながらサインボードを確認する。一瞬、11という数字が見えた。
11秒。さっきの周回で11秒なら、あと2秒は簡単に縮まるはずだ。イケる!

それから2周程しただろうか。再度サインボードを確認した時は、15と言う数字が表示されていた。

俺:(15?他のチームのサインボードと見間違えちゃったな。)

同時にホームストレートを通過するバイクが多い為、サインボードの確認も大変だ。

5周目にピットインサインを確認する。9秒台を確信し、ピットへ帰る。

おーた:「なんかある?」

俺:「いや、全然問題無い。全開でOK!」

おーたへとライダー交代する。ピットアウトするおーた。

タイムを確認する為、ピットへ入り、モニターを見る。

モニターは上位6台までが固定表示されており、7位から下は順にスクロールされて現れてくる。

俺:(78番・・・78番・・・あった!)

モニターに表示されていたゼッケン78番のタイムは15秒前半を示していた。

Kure:「みんな、あんまタイム出てないみたいね。」

俺:「ってゆーか、この計測おかしいよ。俺だって15秒な訳ねーもん。」

Kure:「何秒位の感覚で走ってたの?」

俺:「10秒前後。ちと手元のタイム確認してくる。」

なんぼなんでも今の走行が15秒って事は無いはずだ。それにサインボードで11秒を確認している。
Tシャツに着替え、おーたを計測しているgomaとえみゅ〜の所へ行く。

自分のラップタイムを見ると、1周目16秒。2周目17秒、3周目、4周目15秒。最後の5周目が17秒となっていた。ベストタイムは4周目の15秒20。愕然とする。

俺:「これ、俺のタイム?だよね?」

goma:「そうだよ。」

俺:「11秒出てなかった?」

goma:「いやぁ。出してないけど。」

俺:「え・・・でもだって・・・。」

混乱した。楽勝で9秒台が出てると確信して帰ってきたのに、実際は15秒。どうしても自分のタイムを受け入れられない。

俺:「バイクが遅かったのかな・・・。おーたは何秒で走ってるんだろ?」

おーたは1周目に11秒後半のタイムを出している。2周目以降は13秒〜15秒。

俺:「うぉ!なんじゃこりゃ・・・。」

一発目にいきなりベストタイムなんて事今までに無かった。しかも自己ベスト。
それにしても、バイクは普通に走っている。俺のベストは15秒だ。理解するのに暫く時間がかかった。

おーたは6周を終え、チェッカーとなる。Aグループ午前中の走行が終了した。

昨日の東コースで進めたサスセッティングのフィーリングは、おーたにも好印象だった。
タイムの出ない俺は何を言われても元気が無かった。



暫くしてAグループフリー走行の結果表が発表された。Compusのベストタイムはおーたが出した2分11秒792。42台中、12位につけていた。ちなみに11位は10秒台。13位は13秒台。

俺が11秒と見間違えたのは、17秒だった。
7の表示がではなく、となっていた。 つまり、俺はと読み違えていた。
ちなみに一桁目に1を表示する場合は、ではなく、の方が走ってるライダーからは見やすい。
ショックだった。Bグループの走行が始まっても、俺は眉間にしわを寄せ、1人で悩んでいた。
15秒・・・。意味が分からなかった。そんなに遅いペースで走ってたんだ。17秒を11秒と勘違いし、そこから2秒縮めて15秒。本人は9秒を出した気でいた。もう何度も走っているのに、6秒も体感誤差があるとはお笑いだ。タイムが出なかったショックとのダブルパンチで暫くは誰とも口を聞けない状態だった。

やがてCグループの走行が始まる。KLEVERのグループだ。

いよいよSDRのシェイクダウン

ホームストレートの全開域では普通に走ってる。タイムから中速域の辛さが伺える。車体は良さそう。

俺:「結構走るもんなんだなぁ。」

と思っていると、モニターに映し出されるKureとSDR。5コーナー出口付近でバイクを押している。

俺:「あら。壊れちゃったかな?」

車で迎えに行くじゅん。暫くして帰ってくる。

午前中の走行が終了し、やがて全グループの走行結果が出揃った。Compusは総合で110台中、32位。予選はこれより全体的に3秒は上がる。やはり練習で10秒は切っておかないと、予選通過は厳しそうだ。



午後のAグループ走行開始は2時半から。暫く時間が空く。悩んでいてもしょうがない事に気づき、午後は肩の力を抜いて走る事にする。

そして午後の走行が始まった。ローテーションとタイミングは午前中と同じ。VTR2回目の走行に出て行くトシ。

1周目、20秒で開始したトシは、2周目にいきなり17秒後半。3周目には17秒フラットのタイム。午前中の走行より2秒以上も縮めている。しかし台数も多いからか、4周目、5周目は18秒。VTR初ライド1日目としては上々の出来である。

午前中と同じようにライダー交代。ピットアウト。

ブレーキングやコーナリングで肩の力を抜くように努める。すると、午前中の走行より車体が安定しているような気がしてきた。しかしブレーキングポイントは今以上詰める事が出来ない。ダウンヒルのブレーキングは、相変わらず200メートル。かけた瞬間から、100メートル付近まではフロントが削岩機のように上下動し、景色が殆ど見えなくなる。恐怖心との戦いだ。
それでも必死に全力で5周全部をタイムアタック。
結局5周目の12秒後半をベストにおーたへとライダーチェンジ。
せめておーたにタイムを委ねるが、タイヤも滑り始めたらしく、3周目の13秒後半をベストに7周を終え、Aグループの走行が終了した。

Bグループの走行が始まった頃、トラブルを抱えたSDRの原因を調査していたKLEVERが、その原因を究明した。
話を聞くと、どうやらインナーローターが外れたらしい。とりあえず原因が分かって一安心。午後の走行も走れそうだ。

俺はこの頃、緊張の糸が切れたのか、急に疲れと眠気が襲ってきた。パドックに居てこんなに眠くなるのは始めてだ。
もはやBグループの走行を見学する気力も無かった。

自分のトランポに潜り込み、シートを倒し、顔にタオルを被せる。

がっかりした。悲しくなってきた。もう、訳が分からなくなっていた。走っても走ってもタイムが出ない。
パイロットレースに変えてから、タイムは落ちる一方・・・。今日は走ってても全然面白くない。

アキラ・・・。俺、なんでタイム出ないのかな?こんなんで予選通れるかな?教えてくれ・・・。

アキラは今、骨折の状況が思わしくなく、患部付近の動脈が切れ、白骨化してきていると言う。
このまま進行が進めば白骨の個所は広がる為、再手術が必要だ。但し、その手術は手首が殆ど動かなくなると言う代償と引き換えになる。
既に白骨化した骨が蘇生する可能性は限りなく0%に近いと医師に言われたらしい。それでもあいつは諦めずに、奇跡を信じ、日々リハビリ生活を送っている。

去年の7耐はアキラから色々な事を教わった。ブレーキングポイント,バンクのタイミング,開け始めのポイント,ライン。
それらを聞く度に、「こいつに出来るなら、俺にも出来るはずだ。」と信じ、参考にしてタイムを伸ばしていた。

今年はそういったライディングデータが一切無い。誰も俺に教えてくれる人間はいない。
ブレーキングポイントは間違っていないか?ギリギリだと思っているが、本当はもっと奥まで行けるんじゃないか?
1コーナーのギャップはどうやって通過すればいい?あのバイクのフロントじゃ、ギャップで振られてうまく乗れないんだ。
3コーナーでスピードが落ちている気がする。3速も試したが、トラクションがかからず、向きが変わらない。
5コーナーはもっとブレーキを引きずって入っていけるのか?ブレーキングポイントは150より奥でイケるのか?
130は?130Rは進入で思いっきり倒し込んでも平気なのか?そして何処から開けられるんだ?立ち上がりは5速まで入れた方がいいのか?
ヘアピンやダウンヒルはおまえなら何処でブレーキをかける?最終手前の左コーナーもギャップがあって思いっきりイケ無いんだ。
教えてくれ・・・アキラ・・・。去年のようにうまく乗れないんだ。おまえなら、あのバイク、どうやって乗るんだ?

いつのまにか俺は寝ていた。



Cグループの走行開始を伝えるアナウンスで目が覚める。

俺:「あぁ。Kureさん達の番だ。行こ。」

ピットへ戻ると、ピットロードでおーたがセッティングについて解説していた。

「おーたさん、指パッチン教えて下さい!」
確か、結構手を上に挙げて、足を揃え・・・
こんな感じっ!(パッチン!パッチン!)
一同:「おぉぉぉぉ。」

Cグループの走行も後半に入った頃、じゅんへとライダーチェンジ。しかし、Kureシケインの立ち上がりでエンジンを焼き付かせ、終了となる。ライダーが無事だったのは不幸中の幸いだったが、エンジンは更なる調整が必要となりそうだ。

解説 〜Kureシケイン〜
 もてぎの最終コーナー。誰も呼んでいないが、通称ビクトリーコーナー。クロスミッションなら1速。普通のミッションなら2速で左から右へ切り返す。
 ちなみに右へ切り返した直後、立ち上がりでリアをスライドさせて転倒する事を「Kure状態」と言う。
 厳密には転倒直前にバイクを手放し、無傷でなければKure状態とは言えない。(バイクはボロボロでも可)
 もっと言うと、それがレースのオープニングラップで、尚且つ人のバイクだったりした場合、「完璧なKure状態」と言える。なかなか難しい技だ。
午後の走行結果が発表された。
Compusは俺の出したベストタイム、2分12秒824でAグループ45台中16位。総合では111台中、65位。半分以下だ。
12秒後半のタイムならこんなもんだろう。

こうして公開練習は終了し、個人的には辛い1日が終わろうとしていた。



セッティングデータ
ノーマル今日のセッティング
サスペンション
(フロント)
突き出し0o7o
油面130mm130mm
イニシャル4目盛り3目盛り
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
サスペンション
(リア)
車高0o5o上げ
イニシャル最弱から2段目最弱から2段目
ダンパー最強から1回転戻し最強から1/2回転戻し
メインジェットF165、R162(国内仕様)F175/R178

今日のベストタイム
おーた2分11秒79自己ベスト更新
HIRO2分12秒82
トシ2分17秒09

フロントが安定せず、ブレーキングポイントもこれ以上奥に取れないし、過重をかけてコーナーへ入っていけない。
フロントのセッティングは、旋回性を損なわない所まで固くしてある。これ以上進めるのは無意味だが、フルボトム状態で、残ストロークは殆ど無い。完全にフォークがタイヤとパッドの性能に負けている。しかし、去年の7耐ではノーマルのVTRで6秒を切っている人も居る。どうやったらそんな数字だ出るのか。やはり人間の問題なのか・・・。

もう、残りの練習日も少なくなってきた。このままではどうしようもない。

〜 今日の一言 〜

・キッチリ10秒を切るだと?笑わせるな!

以上

[スポーツ走行(8月6日)]に進む

[’99もてぎ7時間耐久参戦計画]に戻る

[Compus Road Racing]