練習走行(8月8日)
作成日:98/08/09
更新日:98/08/13

決勝当日迄、残すところ丁度2週間。

今回もやらなければいけない事は沢山ある。

まず、リアブレーキ。
スペアのFZRからマスターシリンダーとキャリパーを取り外して持ってきている。
原因として一番濃厚なマスターを交換し、それでもダメな場合はキャリパーも交換する。
それでもダメなら・・・。どうしよう。

次にタイヤ。
前回の公開練習で前後スリックの採用が決定となった。今回はコンパウンドのテスト。
ミディアムとハードを1セットずつ用意してきたが、基本方針はハード。
今日の走行データからタイヤ交換のタイミングや、ひょっとすると交換有無をも判断する必要がある。
その為にもノントラブルで走れなければ、この重要なデータを得ることは出来ない。

ミディアムハード

そしてファイナル。
一番最初の走行を除き、ここまで一貫してRC−SUGOのセッティングデータから、15−41で走ってきた。
可もなく不可もなくといった所だったが、走り慣れてくるにつれ、多少ロングにフリたくなってきた。
その思いは最近のスリック使用により、さらに顕著なものになった。
スリックタイヤで走る事により、プロダクションタイヤよりも進入スピードが速くなり、
立ち上がりでアクセルを開けるポイントも手前になってきた。
これらの事が追い打ちをかけ、ファイナルが合わないと感じるのは自然の成り行きだった。3人共通の意見。
問題はその方向性。

まず考えたのが、ドリブンを1丁増やして42丁に変更し、1速を殺す。
比較的ストレートの短いサーキット等でよくやる方法だ。
筑波の場合は1速から5速で、いわゆる[5速使い]。こちらは2速から6速なので、[1速使わない]。
これだと、今迄1速で回っていたコーナーの立ち上がりが厳しくなるが、進入スピードを上げる事で対処出来るかどうか確認する。
そして2速で回転の上がり気味だったコーナーは3速で入る事になる。やはりその分、進入スピードも高めなければならない。
各ストレートエンドは吹けきっていない為、問題は無いだろう。
慣れに時間がかかりそうだが、何よりシフト回数が減り、耐久を戦う上で、ライダーへの負担が軽減される。
又、タイヤをスリックにした事によるエンジンへの負担を、これで軽減する狙いもある。

もう一つの方法。ドリブンを1丁減らし、40丁。単純に1丁ロングにする。
各コーナーのギアは今まで通り。短時間で柔軟に慣れるのはこちらの方だが、どうしても42丁に合わせられない場合の回避策とする。
何れにしても今までのファイナルで、もう走る事はないだろう。

最後にフロントのブレーキパッド。
前回新品に換えてから、パッドが無くなる迄の総走行時間を合計すると、約7.2h。
しかしこれはその殆どをプロダクションタイヤで走ったものだし、攻め切れていない最初の頃も含まれている。
フロントをスリックにしてからは一気に減り始めたし、7時間の連続走行だと、さらに使用時間は短くなるだろう。
何れにしても当てにならないデータである。
スリックタイヤ使用時における耐久性をテストする必要がある。現時点では交換必須と言った所か。


今回はRSオータがどうしても参加出来ない。これだけの作業をアキラと2人で進める事になる。



今日のプロダクション走行枠は午前2本、午後3本。

前日の天気予報では、今日午前中の降水確率午前0%、午後10%。
暦の上では立秋だが、やっと関東も夏本番。ハードコンパウンドのタイヤテストをするには絶好のコンディションと思われた。

しかし朝から低い雲がたれ込めるどんよりとした天気。

「アキラそっちやって。俺タイヤやるから。」マスターシリンダーの交換をアキラに頼み、俺はタイヤの組み替え作業に入る。

FZRに着いているホイールから、前回使ったミディアムコンパウンドのスリックを外し、新品のハードスリックを入れる。

フロントはすんなり入ったが、問題はリア。前回もやっとの思いでビートが上がった。

リアのビート上げに入ってから1時間もやっていただろうか。
予想通り、幾らエアを入れてもビートは上がってくれない。色々試したけど、やっぱダメ。

「あぁーもぉーー全然上がんない。しかもこのタイヤかてーし。」(ハードなんだから、当たり前)

いい加減嫌気を刺した俺を見かねてアキラが助け船を出す。

「上がんない?どれ。」と2人で作業する。一人はエア入れ、もう一人はエアが漏れている箇所を手で押したり引いたり。
それでもビートは上がってくれない。上がる気配も無い。

「ちょっと休憩していい?」と俺。立ち上がって、ピットの端へ行き、タバコに火を付ける。
「ふぅ〜。」と煙を吐き出すと、パン!パン!と後ろから音がする。振り返るとアキラが、「上がったよ。」と。

(人が1時間かけても上がらなかったビートを30秒で上げやがった。)

俺:「・・・今度からおまえ、タイヤ交換担当な。」

アキラ:「エア入れ係りならいいよ。」

俺:「うん。頼むわ。」と苦笑。

やっとの思いでスリックを組み込んだ瞬間、空から雨が降ってくる。一瞬にして全面ウエット。

ピットで傘は禁止ですパドックも完全ウエット

暫くすると、今度はアキラの作業に異変が起きる。
マスターシリンダーを交換し、エア抜きに入った所。

アキラ:「ねぇ。これ、オイル漏れてるよ。」

見ると、交換したマスターシリンダーからブレーキフルードがポタポタと漏れている。ロッドの角度によってはドバドバと落ちてくる。

交換したマスターポタポタな状態

「げ!マジかよこれ・・・。シール腐ってんのかな?」

「しょーがねーから、前の奴バラしてみっか。」

フルードが漏れるマスターじゃどうしようも無い。とりあえず交換前のマスターを分解してみる事にする。

分解前分解した状態

構造はいたって単純。大ざっぱに言うと、シリンダー本体,戻し用のスプリング,ピストン,プッシュロッド,サークリップ等。
どうも壊れるパーツとは思えないが、あえて言うならスプリングがピストンにハマッて居なかった事くらい。

他に原因も見あたらず、オイル通路の細い穴を洗浄し、とりあえずは[この穴が詰まっていた]って言う事にして再度こいつを組み込む事にする。
結局元の状態。

それからが又大変だった。エアが全然抜けてくれない。これ又1時間以上作業を続けても、マスターカップに注いだフルードは全く奧へ入ってくれない。

ブレーキ周りのパーツを交換した後のエア抜きは、キャリパーのドレン側から注射器等で吸い取る方法があるが、そんなもん持っていない。
困ったあげく、隣のピットに聞きに行く。

「すいませぇ〜ん。あのぉ・・・。ち、注射器とか持ってます?」と、注射器でピュな素振りを見せる。

「注射器ですか?えぇ〜っと・・・」と、便利な道具が一杯詰まっていそうな、大きな箱の方を見ている。

(ラッキー!これはありそうな気配)

再びこちらに振り返りざま、「無いです。」(キッパリ)

「そうすか。ども。」(思わせぶりな態度してからにもぉ)

しょうがないので、次の作戦。吸う。

吸入一人吸入&エア抜き

この作戦で、ひたすらエア抜き作業を行い、やっとなんとか全てのエアが抜けてくれた。

新品のブレーキパッドを入れた頃、時間は既に昼過ぎ。タイヤ交換とマスターシリンダーの交換作業で午前中一杯を費やしてしまう。

交換前に付けていたパッド。
左がTZ用。
右がFZRの町乗り用パッド
(デイトナの一番安い奴)
テストに使用するパッドはフェロード



午後になると雨は一旦止み、路面は絶妙のハーフウエット。

昼1本目の走行を決定したアキラだが、この路面で新品のハードスリックはどうにも不安がある。

ギリギリ迄待って、走行5分前にホイルを交換する。
今まで使っていたプロダクションタイヤがスペアホイルに着いているので、それを履く。

そして14時丁度。プロダクションタイヤで、ハーフウエットのコースへアキラが出ていく。ファイナルは42丁。

1周目、2分27秒。2周目、21秒。
「ほぅ。この路面にしちゃぁ順調に乗れているな。」

しかし3周目、28秒。ガクンとタイムを落とす。ホームストレートもスピードが伸びていない。

「入るぞ!」このシチュエーション。もう何度もやっている。リアブレーキとすぐ分かった。

(やっぱダメだったか・・・。)

エア抜きの為の道具を揃えてピット前で待っていると、やがてピットインしてくる。やはりブレーキ。

リアキャリパーからフルードを抜く。沸騰したフルードが泡を立てながら出てくる。

その熱により、一瞬でビニールチューブがグニャグニャになる。焼けたディスクの熱で、軍手をしていても手が熱い。

そして又リアブレーキ無しでの走行を余儀なくされる。

「ファイナルの確認だけに集中して!」再度ピットアウトするアキラに向かって叫ぶ。

その後2周計測するが、再び雨が降り出し、再度ピットイン。チェッカーとなる。

「ファイナルどうだった?」

「うん、いいよ。すっごく。」



さて。リアブレーキ。

パッドを外す。前回の公開練習でRSオータに買ってきてもらった新品のブレーキパッドが炭化し、またもやボロボロ。


「マスターじゃなければ、キャリパーか・・・?」

って事で、リアブレーキキャリパーを交換する。下側は錆で塗装が浮き上がっているキャリパー。
それでもあるもので対処するしかない。

交換後のリアキャリパー



15時20分。午後2本目のプロダクション。路面はほぼドライだが、雨がパラパラ降っている。
プロダクションタイヤそのままで俺出動。

ゆっくりと1周する。少なくともライン上は全てドライ。

2周目、タイム計測開始から徐々にペースを上げ始める。

しかしドライと分かっていても、スクリーンに当たる細かい雨がどうにも気になる。

それに、進入で急に切れ込むあのいやな感じ・・・・。

(そーいや今フロントに履いてるタイヤって60ハイトだったな・・・。しかもダンストンか!)

※ダンストン:フロントダンロップ、リアブリジストンの事

(それにしても・・・)3コーナー。

(さっきから・・・)5コーナー。

(進入といい、立ち上がりといい・・・)S字。

(やたら・・・)Vコーナー。

(おもしろいように・・・)ヘアピン。

(抜かれるなぁ・・・)ダウンヒルストレート。

今まで、前から近づいては抜いてきたライダー達に次々と抜かれまくる。かなり悔しい。

ブレーキングポイントは変えてないのにバイクがいつもより減速している気がするし、ストレートが妙に伸びない。
全体的になんか重い感じ。

変えたファイナルが合わないのか?進入スピードが遅く、立ち上がりでもたつく。

サインボードは2周目も3周目も30秒代。

(ハッ!)

ヘアピンを立ち上がった所でバイクを右に寄せ、クラッチをきると、異様に減速するFZR。

(やっぱリアブレーキ引きずってる・・・)やっと気づく。

(ピット迄はもってくれ)と祈りつつ、ピットロードへ。
一度バイクを止めてしまうと、ガッチリと食い込んだブレーキパッドが二度と前へは進ませない。

なんとか我々の31番ピットへバイクを止め、リアブレーキを見る。

「うぉ!すげぇっ!」ブレーキディスクが、摩擦熱で真っ赤になっている。

この緊急事態に対して、ピットにいた弟に至急指示を出す。

「写真!写真!カメラ!カメラ!!」(しかし間に合わず。残念。)

みるみる元の色に戻っていくディスク。

これで又、お約束のリアブレーキ無しでの走行となる。

もう何度この作業をやっただろう。フルードを抜き、再度ピットアウト。

(クッソ。さっき抜いてった奴ら全員(一部除く)ぶっちぎってやる!)

しかし、雨は相変わらずパラパラと降っており、思うようにペースを上げられない。

タイムも23秒から24秒。1台も抜けないまま、4周でチェッカー。

ピットへ帰ってくると、「どう?」とアキラに聞かれる。

「ん?何が?」いろんな事が起きたので、一瞬何だか思いつかない。

「いや、ファイナル。」

「あぁ。ファイナルね。ん〜。この路面でこのタイヤだと、俺じゃわからねーなぁ。なんか全然攻められなかったし。」



そして問題のブレーキ。

「まいったな。しっかし。」マスターもダメ。キャリパーもダメ。しかも原因が分からない。もうどうしようもない。

「あっちのマスター組んでみる?」と、スペアで持ってきた、最初にフルード漏れして使用を断念したマスターシリンダーを指さす。

「ん〜。シールがなぁ・・・。それにあのエア抜きが・・・・。」

「他に手段が無いべ?今やれる事ってもうそれしか残ってないし。とりあえずやってみよ。」

フルード漏れしていたマスターシリンダーを分解してみる。シールの状態は、漏れていない方と見た目なんら変わらない。

とりあえず一通り洗浄し、交換する。マスターカップを取り付け、1時間以上もかかったエア抜きに入る。

しかし、今度は順調にフルードが入っていく。シリンダーからもフルードは漏れてこない。

カップのフルードは見る見る入って行き、キャリパーからどんどん出てくる。

「こーだよなぁ。」

「うん、普通こーくるよな。」

約10分程でフルードが充填される。

「やっぱマスターなんかな?」

「だといいけど・・・。それを祈るしかないな。」

結局マスターとキャリパーを交換した。これでダメならもーわからん。



キャリパーの交換作業をしている間、雨は降ったり止んだり。

本日最後の走行。16時40分。アキラ出動。路面はやはりハーフウエット。

23秒、22秒、22秒とラップ。今の所ストレートスピードは落ちていない。
しかし4周目、26秒。又ガクンとタイムを落とす。

「げげ・・・。ダメか・・・。」見た目のスピードはそれ程変わらない様に見えたのだが。

「いや、ギア抜けかなんかしたんかも。」

5周目もストレートに帰ってくる。ピットインはしない。タイムは24秒。

とりあえず、胸をなで下ろす。

その後、24秒から25秒で3周し、全8周を無事にラップすると、チェッカー。

ピットに帰ってくると、「ブレーキ大丈夫だったよ。」とアキラ。

最初に交換した時のフルード漏れが随分悔やまれる。



一応、一番の重要課題がクリアした。(事にする)マスターシリンダーに原因がある事は分かったが、理由迄は突き止められなかった。
シリンダー内部のパーツを一つ一つ試していけば、何れ解明出来るであろうが、それは時間があってもやらないだろう。
今はピストンが犯人としておく事にするが、目で見て分からない部分に致命的な欠陥があるとも思えない。

ファイナルの変更は、アキラがハーフウエット&プロダクションタイヤで大丈夫と言っているから、条件が合えば俺やRSオータでも順応出来るだろう。

今日1日の進捗はこれだけ。天気とブレーキに翻弄され、ブレーキパッドの耐性データも取れなかったし、ハードスリックにおいては履いて走ってもいない。

結局使わなかったハードスリック

レースウィークの公式練習前に走れる日は、残すところ後1日。走れようが走れまいが、もうそれを最後に決勝の作戦を練らなければならない。

次は8月12日。来週の水曜日。

本日のベストタイム
アキラ2分21秒43
HIRO2分23秒15

〜 今回の教訓 〜

・ブレーキ直った!
・雨降ったぞ!>降水確率0%と予報した気象庁(でも1o以上も降ってないな)
・タイヤとブレーキどーすんねん!

以上

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